コラム
産業廃棄物とその処理方法
まれに、産業廃棄物の不法投棄…などというニュースを耳にすることがあります。
産業廃棄物と聞くと、どこかの工場や大きな店など、自分とはあまり関係がないところから出たゴミなんだろうと考えてしまいがちではありませんか?
しかし産業廃棄物には定義があり、それを詳しく知ると、あながち全く関係がないとも言い難い現実が見えてきます。
ここでは意外と知られていない地味な存在である、産業廃棄物についてご紹介してまいりましょう。
産業廃棄物と一般廃棄物との違い
一般廃棄物というのは、日常的に私たちの家庭から出て、主に自治体で回収されるものを指します。
一方、産業廃棄物は、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、産業廃棄物処理法で定められた範囲のものを指しています。
廃棄物処理法とは
産業廃棄物は、事業活動に伴って生じた廃棄物の中の、法令で定められた20種類の範囲のものを指します。
一般の家庭などから排出されるゴミ(一般廃棄物)は、ゴミを排出した家などが在る自治体に処理責任があるのに対し、産業廃棄物は排出事業者に適切に処理する責任があり、処理に関しては自治体を越えた広域移送が認められています。
産業廃棄物の種類
・あらゆる業種から排出されるもの
- ①燃え殻
石炭がら、焼却炉の残灰、炉清掃排出物、その他焼却残渣
※残渣(ざんさ)というのは濾過 (ろか) したあとなどに残ったかすを指します - ②汚泥
排水処理後および各種製造業生産工程で排出された泥状のもの、活性汚泥法による余剰汚泥、建設汚泥など - ③廃油
鉱物性油、動植物性油、潤滑油、絶縁油、洗浄油、切削油、溶剤、タールピッチなど - ④廃酸
写真定着廃液、廃硫酸、廃塩酸、各種の有機廃酸類等すべての酸性廃液 - ⑤廃アルカリ
写真現像廃液、廃ソーダ液、金属せっけん廃液など全てのアルカリ性廃液 - ⑥廃プラスチック類
合成樹脂くず、合成繊維くず、廃タイヤを含む合成ゴムくず、等固形状・液状の全ての合成高分子系化合物 - ⑦ゴムくず
生ゴム、天然ゴムくず - ⑧金属くず
鉄鋼または非鉄金属の破片、研磨くず、切削くずなど - ⑨ガラス、コンクリート、陶磁器くず
板ガラスなどのガラス類、製品の製造過程等で生ずるコンクリートくず、レンガくず、モルタルくずなど - ⑩鋼さい
鋳物廃砂、電炉等溶解炉かす、ボタ、不良石炭、粉炭かす - ⑪がれき類
工作物の新築、改築または除去により生じたコンクリート破片、アスファルト破片、その他これらに類する不要物 - ⑫ばいじん
大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設、ダイオキシン類対策特別措置法に定める特定施設などで発生するばいじんで、集じん施設によって集められたもの - ⑬紙くず
建設業に係るもの(工作物の新築、改築または除去により生じたもの)、製紙業、新聞業、出版業、製本業などから生ずる紙くず
・業種が特定されるもの
⑭木くず
- 建設業に係るもの(範囲は紙くずと同じ)、木材・木製品製造業(家具の製造業を含む)、パルプ製造業、おがくず、貨物の流通のために使用したパレットなど
- ⑮繊維くず
建設業に係るもの(範囲は紙くずと同じ)、衣服その他繊維製品製造業以外の繊維工業から生ずる木綿くず、羊毛くず等の天然繊維くず - ⑯動植物性残渣
食料品、医薬品、香料製造業から生ずるあめかす、のりかす、醸造かす、発酵かす、魚および獣のあらなどの固形状の不要物 - ⑰動物系固形不要物
と畜場において処分した獣畜、食鳥処理場において処理した食鳥に係る固形状の不要物 - ⑱動物の糞尿
畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとりなどの糞尿 - ⑲動物の死体
畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとりなどの死体 - ⑳以上の産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないもの(例えばコンクリート固型化物など)
このように産業廃棄物というのは、一見しただけでいかにも身体に悪そうなものが名を連ねています。
産業廃棄物を処理する責任
- ・廃棄物処理法において、処理に関しては廃棄物を分別・保管することが求められますから、廃プラスチック類、鋼さい、金属くずなど、廃棄物の種類ごとに分別された後、保管さする流れです。
素材を分けることが困難な廃棄物は、混合廃棄物として分別された廃棄物とは別な扱いとします。 - ・廃棄物の約8割は中間処理施設に運ばれ、中間処理をされてから次工程に送られます。
中間処理をされたものは処分後の廃棄物の種類ごとに保管され、順次トラックに積み込まれて、最終目的地に搬入されます。
そして、リサイクル処理をされた後、原材料や熱源として再利用されます。 - ・リサイクルできない産業廃棄物は、最終処分場に送られ、埋め立てられます。
昨今、ゴミの埋め立て場などは建設自体が難しく、しかし年々受け入れなければならない産業廃棄物は増えていて、埋め立て場の運用には常に危機感が伴っています。
産業廃棄物はこのように素材にまで分解・分別されて、できる限り再利用をしようという努力が続けられているのです。
許可・監督の管轄と事業者の資格
事業として産業廃棄物の回収をする場合、「産業廃棄物収集運搬業許可」を取得する必要があります。
これを取得して、小売業者又は指定法人、若しくは指定法人の委託を受けていると、家電リサイクル法4品目の回収が可能になります。
従って、不用品回収業を営もうとした時、回収品目の範囲が広がることになり、メリットにつながります。
あまり知られていない産業廃棄物の処理に関するお話し、いかがでしたでしょう。
再開発で古いビルを壊して新しいビルを建てる、古い家を建て替えるなど、経済活動を行えば産業廃棄物が出るのは仕方のないことだともいえます。
しかし、それらを適切に処理していかなければどうなるか、過去多くの人々が苦しんできた、公害問題が頭をよぎります。
数々の化学物質や不法投棄で水源や土壌が汚染され、それによる生態系の破壊が起きれば、その影響は必ず我々の生活にも及ぶでしょう。
そうならないよう、今、政府や自治体、事業者は、厳しい基準に基づいて産業廃棄物を処理しています。
とはいえ、一部の悪質な不用品回収業者などは、産業廃棄物収集運搬業許可を取得しないまま営業を続け、その結果、正式な手順で処理できない廃棄物が美しい自然の中に不法投棄されたり、不法に集められた産業廃棄物が山積みになって火災を起こしたりしています。
環境と我々自身の生活を守るためにも、産業廃棄物がどういった工程で処分されているかに目を向けて、不法な業者を利用してしまわないよう、気をつけることも重要です。